悪魔ラーメンが教えてくれた、“尖ってても負けない”という生き方

1  悪魔からの誘い

皆さんは、今まで食べた中で一番「しょっぱかった食べ物」は何ですか?

私は、間違いなく一条流がんこラーメン総本家の「悪魔ラーメン」である。

ラーメンというジャンルにとらわれずに未だに人生で一番しょっぱかった食べ物でもあるのだが、一番美味しくてしょっぱくて自分の琴線に触れた唯一無二のラーメンでもあるのだ。

前回も書きいたが、私が悪魔ラーメンを知ったのは「ラーメン大好き小泉さん」の実写版ドラマであった。

物語の流れで、色々なラーメン屋が出てきたのをなんとなく覚えていたが、はっきりと覚えていたのは悪魔ラーメン一択で、テレビでの第一印象だけで俺の記憶の全ては悪魔ラーメンにかき消されたのを今でも覚えている。

「この悪魔ラーメンは絶対に食べたい!知りたい!」

ラーメンに対する探究心・好奇心が人一倍強い俺の内なる声は、「しょっぱいよ〜、しょっぱすぎて後悔しても知らないよ〜」という悪魔の声に導かれ、気がつくと一条流がんこラーメン総本家へ向かって足を運んでいた。

そして、今まで人生で味わったことのない衝撃的で感動的な体験をすることになるのであった。

2 悪魔との死闘〜その先にあるもの〜

普通、しょっぱすぎる食べ物って美味しくないよね?

喉が渇くし、血圧は上がるし、体は浮腫むし・・・。

しかし、そんなことは承知の上で悪魔ラーメンにハマる人が続出していると聞いていた。

純粋に俺が悪魔ラーメンを食べたいと思ったのは、先ほども言ったがしょっぱすぎるラーメンに対する探究心と好奇心からだった。

期待と不安に胸を躍らせながら駅から店に向かって歩いていくと、いつもどおり、店の前には長い行列が。

この中の一体何人が悪魔に魂を奪われる運命にある人なのだろうか。

そんなことを考えながら並んでいると、いつもどおり元気な店主の声で店内に案内され「今日は何にしましょう。」という店主からの問いに対し「悪魔大盛りで」と回答した勇者一郎がいた。

店主は「お兄ちゃん悪魔は初めてだったっけ?ハマって抜け出せなくなっても知らないよ。」

そんな店主とのやり取りがあり、不安と期待が入り混じった状態で待っているうちに、悪魔ラーメンが着丼。

「こ、これが悪魔ラーメンか。確かにいつも食べている上品や下品より断然濃くて黒い。しょっぱすぎて食べられなかったら嫌だなあ。最悪、一口食べて残すようなことがあったら人生で一番うまいと思っているラーメン屋なのに出禁にされてしまうかもしれないな。」

ちなみに上品とは透きとおったスープのラーメン。下品とは濁ったスープのラーメン。

この店のラーメン二郎でいうところのコールのようなものである。

「RPGの勇者になったつもりで悪魔を倒すか!悪魔は倒さないと平和は訪れない。悪魔を倒すのは麺食一郎だ!」

そんなしょうもないことを考えているうちに、とうとう待ちに待った悪魔ラーメンとの対峙が。

まずは一口スープから。

「???しょっぱーーい、ウマーい、しょっぱいうまい。やっぱしょっぱいけどうまい!」

しょっぱさの優勢を保ちながら、しょっぱさとうまさが交互にやってくる。

しかし、しょっぱさだけではなく、ちゃんといつもどおりの旨みはちゃんと感じる。しょっぱさが旨みを邪魔することなく、しょっぱさと旨さのダブルセンターがそこに成立していた。

「しょっぱすぎるけどうまい。」

私の箸は休まることなく、悪魔ラーメンを食していく。

3 悪魔の虜、爆誕!

悪魔ラーメンの麺はみるみる減り、意外にも水を飲むこともなくどんどん箸が進む。

しょっぱさMAXだけど美味い。唯一無二でしょっぱさが突き抜けてるけどまずいなんてことは全然ない。

食べる前に恐れていたラーメンを残してしまうのではないかという懸念は払拭され、いつもどおり完食。

店主から「おう、完食したね。食べ終わってからしばらくするとまた食べたくなるよ。悪魔ラーメンには中毒性があるから。」

ーーーそして数日後ーーー

悪魔ラーメンの魅力にすっかりハマった俺は、店主の言うとおり悪魔ラーメンを無性に食べたくなる体質に変わっていたのであった。

4 悪魔ラーメンのような生き方

当時の俺は、自分の人生・働き方に対してモヤモヤした気持ちを感じていた。

どちらかというと周りからは羨ましがられることも多い仕事だったが、物足りなさを感じていた。

「このまま、何もなく年老いて定年を迎え、なんとなく成功も失敗もない人生だったなあ。」

とばる人生のエンドロールを迎えるのが怖くて、でも何もできなくて、そんな自分に嫌気がさしていた。

きっと、こんなことを考えているのは社内でも俺ぐらいであろう。

稀に辞めていく人も異業種にチャレンジすることなく、同業種での転職をする人が多いことからもそれを裏付けている。

「当時から今にかけてもしょっぱい状況であることに変わらない。でも、そんなことを気にしていてもしょうがない。しょっぱい中にも旨みを足しながら人生を歩んでいきたい。」

ーーーラーメンのように外れ値的に尖っていても、それに負けないものがあれば誰にも負けない一杯になる。ーーー

俺にとっての悪魔ラーメンは勇者が倒すべき悪魔などではなく、人生の教訓を啓示してくれた悪魔の姿をした神様であった。

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