1 主役を超える名脇役
皆さんは、名脇役と聞いて誰を思い浮かべるだろうか。
小日向文世さんや松重豊さん、渡辺いっけいさんなどを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
名脇役は主役を引き立て、ドラマの格を1ランク、いや2ランクほど上げるといっても過言ではない存在感を放っている存在である。
実は、ラーメン界隈にも名脇役は存在するのだ。
例えばラーメンが主役なら、チャーハン、餃子、チャーシュー丼などは脇役である。
しかしながら、時に脇役の存在が際立ち主役以上の存在感のある脇役もいるものだ。
松重豊さんだって名脇役としての認知度はダントツで高いけど、「孤独のグルメ」では圧倒的な存在感のある主役であることは疑いがないだろう。
そう、ときに脇役は主役を超える。
麺食一郎ワールドでは、主役級の存在感を放っている餃子や稚チャーハンなどの脇役を「麺脇役」と呼ぶことにする。
2 あるある探検隊の西川くん
東京都板橋区に、かつて伝説のチャーハンを出す店があった。
その店は何を食べても美味しいと評判であったが、特に「チャーシューチャーハン」が有名で「安くて盛りが良くて美味い」と評判で行列のできる店だ。
チャーハンの中でも大きく分けて「パラパラ系」と「しっとり系」に分かれるようであるが、この店はしっとり系のチャーハンの最高峰ともっぱら評判だ。
ある筋によると「東京3大チャーハン」という呼称があって、この店も名を連ねているらしい。
俺はこの主役級の存在感を放つ麺脇役「チャーシューチャーハン」を食べに大山駅から店へと向かった。
池袋駅からそんなに離れていない駅ではあるのだが、下町の雰囲気が漂うレトロな雰囲気を醸し出している。
商店街を抜け、大通りに出てしばらく歩くとお目当ての町中華屋が見つかった。
「よし、思ったより並んでないぞ。」
この日は運が良く、開店30分前で10人ほどしか並んでいなかった。
行列に並びながら本を読んでいると、あっという間に開店の時間になった。
並んでいる間に渡されたカードを店員に渡し、席に案内される。
思ったより広い店内だけど、歴史のある作りの店でこれから食べるであろうラーメンとチャーハンに胸が躍る。
そして、席に着くとしばらくしてメニューの注文をとりにきたのだがここで大きな問題が発生する。
初めていくラーメン店あるあるなのだが、麺やご飯の量がわからないので大盛りにしようかどうか判断に迷ってしまうのだ。
「麺を大盛りにしようか・・・ラーメンを大盛りにしようか・・・それとも両方大盛り?」
店員は迷っている俺に「決まったら声をかけてください」と声をかけ、しばらく待ってくれていた。
ほんの数十秒の間くらいなんだけど、3分くらいの時間の長さに感じることってない?
ーーーうん、あるある!あるある探検隊!あるある探検隊!ーーー
西川くんが気絶してしまった時に手を挙げるような感じで店員を呼び注文を伝える。
「ラーメンとチャーシューチャーハンでお願いします。」
散々迷った末に決めたのは、両方とも普通盛であった。
ここでひとつ誤解なきように言っておくが、麺食一郎のポリシーとしてラーメンを頼まないと言うことは絶対にない。
チャーハンや餃子などの麺脇役を食べるなら必ずラーメンも頼むのが麺食国憲法の第1条に書いてあるので安心してほしい。(罰則はない)
3 麺脇役は2人いた
行列に並んでいる時の本を読みながら、ラーメンとチャーハンが来るのを待つ。
この待っている時間も美味しく食べるためのスパイスなのだ。
そして、待ちに待ったラーメンが先に運ばれた後、伝説の「チャーシューチャーハン」がテーブルに運ばれた。
ラーメンについては別の記事で触れているのでここでは省略する。
この写真を見てほしい。
「すげえ・・・。ゴロゴロした大きいチャーシューがたくさん入っている!」
見た目だけで、伝説級の存在感を放っていた。
そして、相方のスープも黄金色に輝いている。
レンゲに手をかけ、大きなチャーチューの入った米を口に運ぶ。
「チャーシューめっちゃ柔らかい!えっ!チャーシューてこんなに柔らかくなるの??チャーハンもしっとりしてブラックペッパーが効いてパンチもあって最高!」
予想をこえるパフォーマンスに驚きながら、次は黄金色のスープをレンゲですくう。
「??。酸味が効いててうまい!町中華によくある感じのスープとはまた違う!」
よくある感じのスープでも十分うまいのだが、スープも自分の想像を超えてきた。
これぞ麺食一郎界隈でいうところの「麺脇役」。
チャーハンだけでなくスープも麺脇役であった。
※一緒に頼んだラーメンについては別記事に書いてます。
4 一期一会
このチャーシューチャーハンは冷凍食品として商品化されているようである。
つまり、それだけ人気で思い入れのあるチャーハンということなのだろう。
周りの卓を見回すと、「レタスチャーハン」や「とびっこチャーハン」など目をひくチャーハンがたくさんあった。
ラーメンだけでなく、チャーハンや餃子などの麺脇役は、時には主役を引き立てたり、時には主役以上の輝きを放っていると前述したが、ここのチャーハンは明らかに後者なのだろう。
ラーメンもかなりレベルの高いラーメンであったが、ここのチャーハンは主役を張るにふさわしいエースで四番のチャーハンであった。
「次来た時は、とびっこチャーハンにチャーシューメンでいこうかな」
麺脇役に会えた幸せと美味しいラーメンの余韻に浸りながら大山駅へ向かった。
ーーーまたこの店でチャーハンとラーメンを食べようーーー
しかし、その日が来ることは2度となかった。
この日食べたラーメンとめちゃめちゃ柔らかい大きいチャーシューがごろっと入ったチャーシューチャーハン。
俺の心の中のアルバムにそっとしまっておこう。