その日が最後だった|もう二度と出会えないチャーハンの話

名脇役の存在感

皆さんは「名脇役」と聞いて誰を思い浮かべるだろうか。

小日向文世さん、松重豊さん、渡辺いっけいさん…。主役を引き立て、ドラマの格を1ランク、いや2ランクも上げる存在感を放つ人たちである。

実は、ラーメン界にも「名脇役」がいる。

ラーメンが主役なら、チャーハン・餃子・チャーシュー丼は脇役。

だが、時に脇役が主役を超える存在感を放つことがある。

麺食一郎ワールドでは、そんな一皿を「麺脇役」と呼ぶことにした。

東京・大山の伝説「丸鶴」

東京都板橋区・大山駅。ここにかつて伝説のチャーハンを出す町中華「丸鶴」があった。

特に有名だったのは「チャーシューチャーハン」。

「安くて盛りが良くて美味い」と評判で、東京三大チャーハンの一角に数えられた名店である。

俺も「主役級の脇役」に出会うべく、大山駅に降り立った。

商店街を抜け、大通りを歩くと、町中華の老舗らしい佇まいが目に飛び込んでくる。

ラーメンも、チャーハンも

開店30分前、行列は10人ほど。幸運にも早めに入店できた。

席に着き、迷った末に注文したのは「ラーメン」と「チャーシューチャーハン」の普通盛。

麺食一郎のポリシーとして「チャーハンだけ」なんてあり得ない。

必ずラーメンとセットで挑むのが“麺食国憲法第1条”である。

麺脇役の輝き

先に運ばれてきたのはラーメン。そして、ほどなくして伝説の「チャーシューチャーハン」が姿を現した。

「すげえ…!ゴロゴロしたチャーシューが惜しげもなく入っている!」

見た瞬間に圧倒される存在感。相棒のスープは黄金色に輝き、すでに名脇役の風格を放っていた。

レンゲで一口。

「チャーシューがめちゃめちゃ柔らかい!しっとりした米とブラックペッパーのパンチが最高!」

さらにスープをすすると、酸味が効いていて、町中華の“よくあるスープ”の一歩先を行く味わい。

この瞬間、確信した。―――ここのチャーハンとスープは、確実に“麺脇役”を超えている。

一期一会のチャーハン

丸鶴のチャーハンは冷凍食品として商品化されていたほどの人気ぶり。

それだけ愛され、思い入れのある一皿だった。

卓を見渡すと「レタスチャーハン」や「とびっこチャーハン」など、個性的な麺脇役たちが並んでいた。

だが、この日食べたチャーシューチャーハンは間違いなく「主役を張れるチャーハン」だった。

「次はとびっこチャーハンとチャーシューメンを頼もうかな」

そう思いながら大山駅に向かったが、その日が来ることはなかった。

伝説のチャーハンとラーメンの思い出は、今も心の中のアルバムに刻まれている。

まとめ

  • 丸鶴のチャーシューチャーハンは“主役級の麺脇役”だった
  • 柔らかいチャーシューとしっとり系チャーハンの完成度は伝説級
  • 黄金色のスープもまた、見事な脇役だった

「脇役が主役を超える」瞬間を教えてくれた丸鶴。

ーーーその味は、今も忘れられない。ーーー

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