『厨房で死ねたら本望だよ』|丸鶴の店主が教えてくれた生き様

1 ラーメンチャーハンのゴールデンコンビ

ラーメン界の「修二とあきら」「KinKi Kids」・・・

それがラーメンとチャーハンのゴールデンコンビである。

「麺脇役」カテゴリでも紹介しているが、ここ丸鶴は「チャーシューチャーハン」が有名な老舗町中華である。

ラーメンばかり食べている麺食一郎と思われているかもしれないが、チャーハンはチャーハンで俺自身もすごく好きな食べ物である。

このチャーハンとラーメンを組み合わせるとどうなるか。

チャーハンとラーメンを混ぜて食べると言っているわけではない。

一緒に注文し、皿と丼を交互に箸が行き来するその様は全ての炭水化物愛好家が夢見る光景でもある。

また、「炭水化物×炭水化物の魅惑のゴールデンコンビ」は単体で頼むよりもその価値は増幅される。

炭水化物を食らうのは背徳感があるが、「炭水化物をおかずに炭水化物を喰らう」背徳感は何者にも代え難い。

最初はチャーハンが美味しい店ということで「ラーメンはチャーハンには敵わないんだろうな」という先入観のもと、ラーメンを頼んだ。

金額を見ても、相場より相当安い金額であったし、この店はチャーハンが主役のイメージが先行していたので正直あまり期待はしていなかった。

俺は、何よりもラーメンが大好きな外れ値の麺食一郎。

ラーメンを頼まないという選択肢はない。

チャーハンは「とびっこチャーハン」「レタスチャーハン」「チャーシューチャーハン」など何にするか迷ったが、ラーメンは迷わず一番オーソドックスなラーメンを頼んだ。

シンプルなラーメンにこそ、一杯の真髄は見えやすい。

この後、俺の「正直期待していない先入観」が間違いであったことを知ることになる。

2 ラーチャ(ラーメン×チャーハン)着丼

ラーメンが先に来るか、チャーハンが先に来るのか、それとも同時か。

そんなことを考えながら着丼を待っていた。

どちらが先に来ても、まずはラーメンから食べる。

麺が伸びないうちに食べたいという思惑と、好きなものは初めに手をつけたいという2つの思惑によるものだ。

それが麺食一郎のラーメン流儀。

いざフタを開けてみると、トップバッターはラーメン。

先に着丼したラーメンはよくみるオーソドックスなラーメン・・・ではなかった。

まずビジュアルからして違う。

皆さん、お気づきだろうか。

俺が一番先に目を引いたのは「三角のお揚げ」である。

「きつねうどん」ならぬ「きつねラーメン」??

その他にもわかめ、チャーシュー、ナルト、シナチクが入っており豪華な顔ぶれである。

俺はお揚げが入っているラーメンに出会ったのは生まれて初めての経験であり、これから食す魅惑のラーメンへの好奇心から心が踊っていた。

たまにお揚げが無性に食べたくて、赤いきつねを買ったりする時があるが、店でもカップラーメンでもラーメンにお揚げが入っているのは見たことも聞いたこともない。

待ちきれない思いを胸に箸を手に取り、いつもなら麺から喰らうが今回はお揚げから食そう。

そんなことを考えながらお揚げをすくい口に入れると衝撃が走った。

「しっかりと味付けされており、噛んだ時のお揚げとスープがめちゃめちゃマッチしている!お揚げ自体がレベル高い!」

そして、次にスープを飲み麺を啜る。

ちゃんと出汁が効いた文句のつけようがない味のスープに麺がしっかりと絡む。

「いつまでも口に入れていたい」

そう思える至福の瞬間であった。

ーーーここで事前に知った店主の情報が頭をよぎるーーー

ここの店主は幼少期より鍋をふるい、街中華の道を歩んできた。

半世紀以上、このお店で仕事に向き合ってきたということだ。

バイトに根をあげ、一日で辞めていく人も星の数ほどいる中、半世紀以上を同じ道に費やしてきた人はどれくらいいるだろうか。

雨の日も風の日も台風の日も、時には体調が辛くて休みたくなった日も数多あったであろう。

しかし店主は言う。

「毎週、ここでご飯を食べてくれる人のことを考えると休めないよ。本当に感謝だね。」

よくある上辺だけの言葉ではない。

事前情報によると店主は厨房で何回も倒れて救急車で何度も運ばれたことがあるようである。

背中には何本ものボルトが入っているとか。それも無数に。

まさに命を削りながら一杯に一皿に人生を賭けているのだ。

チャーハンで有名な店なのだが、ラーメンを何千杯食べてきた俺の感想としてもラーメンはただものではなかった。

俺の元にある一杯のラーメンから店主の心の声が聞こえた気がした。

「一日一日、人生に魂を込めて生きているか?」

一杯一皿に向き合う積み重ねで、店主は人生に爪痕を残してきた。

「厨房で死ねたら本望だよ。」

これは店主が実際にYouTubeで言っていた非常に重い言葉である。

同じセリフを言える人はこの世の中に何人いるだろう。

3 一杯の先

俺は一日一日に真剣に向き合ってきただろうか。

納得して魂を込めれるようなものを持っているだろうか。

世の中には色々な仕事がある中で、その仕事にプライドを持ち人生を賭けている人はどれだけいるだろうか。

給料がいい仕事、楽な仕事、休みが多い仕事、安定している仕事・・・

こんな視点で仕事をしている人がほとんどではないだろうか。

店主の生き様が詰まったラーメンを食した後、自分の今までの人生を振り返りながら帰路についた。

きっと、まだ出会っていないだけかもしれない。

いや、これから出会うことはないのかもしれない。

「俺の人生、まだまだこれからだよね?」

それは、俺がこれからどう生きていくかで答えが決まる。

そうこれから。

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