ある日、朝のニュースを見ていると「ラーメン屋で初めてミシュランの星を取ったお店を紹介します。その名は『Japanese Soba Noodles 蔦』です」という一報が流れた。
ミシュランについては、星が1つだの2つだの世界的に有名な料理店に贈られる称号であることは知っていた。
確かタイヤメーカーのミシュランが美味しい料理店に足を運ぶ人が増えるようにという思いで行っている事業のはずだ。
美味しい店に車で通う人が増えればタイヤの消耗も進むので、結果、タイヤの販売促進につながるとか。
真偽のほどはわからないが、ミシュランで星を取ることは世界的に名誉なことなのである。
「日本のラーメンで初めてミシュランの星を取ったラーメン」
俺の好奇心が沸々と湧き上がり、翌日には店に足を運んでいた。
ニュースの影響もあってか、朝7時くらいから店に入るのに整理券を配布していたが、朝7時の段階で夕方の券しか残ってなかった。
恐るべしマスメディアの影響力。
一度仕切り直しで時間を潰して、再度店へ向かう。
朝から何も食べていなかったが、あえて何も食べずにラーメンを食すことにした。
店に入ると「小洒落た料亭みたい。すげー(感動)。匂いがすごくいい匂いがする。なんだこの匂いは?あっそうか。この匂いはトリュフだ。」
人生で初めてトリュフの匂いを知った。
店構えや匂いからラーメンに対する期待もさらに膨らむ。
ラーメンを注文し、着丼を待つ間、思いっきり鼻から息を吸ってトリュフの匂いを堪能していた。
ーーーミシュランで初めて星をとったラーメンーーーー
言わずもがな、日本ラーメン界の歴史を変える一杯にこれから出会えるのだ。
いざ着丼したラーメンを見ると、トリュフに(恐らく)低温チャーシュー、存在感バッチリな上品なシナチク、煮卵・・・と上品な出立ちのラーメンが運ばれてきた。
銀座を歩いているお洒落な女性が目に浮かんだ。
「いい匂いで上品な出立ちで育ちの良いお嬢様」
言葉にするならこんな感じであろうか。
ラーメンという食べ物に「お洒落」という概念を感じたのはこの一杯が初めてである。
そしていざ食すと、見た目だけではないことが判明する。
まずスープを飲むと、口の中一杯にトリュフの香りが広がる。
うん、いつまでも口の中に含んでいたいこの感じ。
スープだけでもきた価値はあると思ったくらい衝撃を受けた。
麺も硬さといい、スープとの相性といいレベルが高い。
チャーシューもシナチクも煮卵も、ラーメン全体のコーディネートとしてバッチリである。
頭の先からつま先まで洗練されたお洒落なラーメン。
見た目だけではなく、中身も洗練されていた。
よく、人は中身だというが外見も中身の一部だとつくづく感じる。
これは不細工だとか可愛いとかの話ではなくお洒落についての話である。
例えばよく「清潔感のある人」の話題がよく取り上げられるが、外見に気を使うということは他人に気を使うことと同義であると私は感じる。
他人にどういうイメージを持ってもらいたいかが外見に現れる気がするのだ。
そして、そのイメージが狙いどおりに伝わった時、中身もある人であれば、掛け算的にその人への好感度は爆上がりする。
そして、自己への信頼も爆上がりし、自信につながり、その自信が何かしらのポジティブな行動へとつながっていく。
ーーー人間として星をとれるような男性に俺はなりたいーーー